目次
脳梗塞予防への血圧管理は投薬以外で行うべき
降圧剤治療と死亡率
もくもく博士!
今回も脳梗塞予防と血圧について教えてください。
わかりました!
脳梗塞予防と血圧の薬の関係については、以下の記事も参考にしてください。
脳梗塞予防への血圧の薬には注意が必要|降圧剤の危険性について
こちらの記事では、血圧の薬の危険性について触れました。
今回は、薬に頼らずに血圧を管理する方法についてお話ししましょう。
たしか、脳梗塞の場合は、血圧を下げすぎると再発の危険性が高まるということでしたよね?
それから、100歳を超えるような超高齢者では、血圧は高い方が自立度が保たれるということも印象的です。
でも、少し疑問もあります。
100歳を超えた時点で、収縮期血圧が150~220mmHgあるような方々は、多分若いころからそれなりに高めだった可能性があります。
つまり、若いころから高めの方々が、100歳を超えても元気を維持されているということですよね。
そうだと思います。
繰り返しますが、興味を持たれた方は、是非以下の記事をご一読ください。
脳梗塞予防への血圧の薬には注意が必要|降圧剤の危険性について
そして、降圧剤で血圧を下げることのリスクもけっして無視はできませんね。
はい。
そこで、今回も前回の図を使用しますね。
降圧剤で死亡率が高まる
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
この図は、180/110mmHgなどの高血圧の方ほど、降圧剤を服用すると死亡リスクが上昇するというものでしたね。
そうでしたね。
さらに、次の図をご覧ください。
血圧180/110mmHgのグループを降圧剤で血圧を下げた結果
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
この図は、先ほどの図の血圧180/110mmHgのグループに降圧剤を投与して血圧を下げた後の追跡調査です。
注目していただきたいのは、140-159/90-99mmHg以下のように、ガイドラインでは理想的と考える血圧まで下げたグループの方が死亡率が高いということです。
これは・・・・・
絶句しますね。
つまり、血圧が高い方ほど、降圧剤により理想的な血圧に近づけることは危険ということかもしれないですね。
100歳を超える超高齢者では、血圧が高い方が自立度が高く、血圧を理想的に下げる方が健康リスクが高まるのでしょうか?
そうだとすると、降圧剤の服用には慎重さが必要ということになります。
そうかもしれません。
いずれにしても、患者さんの側もしっかりと自分の頭で考える姿勢が必要です。
薬の服用の前に、医薬品添付文書を読むなどの態度を持った方が良いと思います。
降圧剤からの離脱法
このような情報に触れると、現在、既に降圧剤を服用している方々の中からも薬を止めたいという意見が出そうですね。
しかし、血圧の薬は、一度服用を始めたら一生続けなければならないと聞いたことがあります。
これは、いかがでしょうか?
たしかに、日本では、多種類の降圧剤が高容量で処方されていることも多いので、一度に止めてしまうと血圧が急上昇する危険性があります。
その理由は、降圧剤は「重石」のように血圧を抑えつけていますが、身体は必要な血圧を維持するために頑張ろうとするからです。
自己判断で薬をいきなり止めることは良くありません。
そのため、降圧剤を減らすには主治医を説得する必要があります。
それには、まず、家庭血圧をしっかりと記録することが大事です。
その際に、正確な血圧測定を行う上で参考にしたいものがあります。
たしかに、血圧はちょっとしたことで変動します。
本当に自分の測り方が正確なのかどうかについては、いつも迷うところです。
そのような正確な測定方法があるのなら、是非知りたいと思います。
それは、英国の国立保健医療研究所(NICE)が作成したガイドライン「NICE2019」です。
次の図をご覧ください。
英国の国立保健医療研究所(NICE)の診断のための血圧測定法
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
いろいろありますね。
日本では、病院でこんなに詳細な測定をしてもらった記憶がありません。
先ずは、制度の高い血圧計を用意することです。
実は、Amazonで販売上位の血圧計でも、制度が検証済みのものは約20%にすぎないということです。
「医療機器認証番号」が付いた血圧計の購入がおすすめです。
左右の腕で、2回測定します。
左右の差が15mmHg以上あったり、140/90mmHg以上なら再度測定とされています。
そして、最終的には低い方の血圧を記録します。
たしかに、何度も測っていると変動しますので、どれを記録すべきかを迷いますよね。
このように、明確に決められていると安心します。
それで、140/90mmHg〜180/120mmHgの場合は、自由行動下血圧(ABPM)か家庭血圧(HBPM)の測定を行います。
自由行動血圧(ABPM)とは、携帯できる専用の血圧計で24時間や48時間連続して一定間隔で自動的に血圧測定を行うものです。
ただ、この血圧計は高価で操作説明などに時間がかかるため、日本ではあまり使われることはありません。
家庭血圧(HBPM)測定であれば、行えますね。
英国の国立保健医療研究所(NICE)の診断のための血圧測定法
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
自由行動血圧(ABPM)では、8時から22時までの間に1時間あたり少なくとも2回測定を行います。
家庭血圧(HBPM)では、朝と夕にそれぞれ1分間隔で2回測定します。
それを4〜7日間継続して、2日目以降の平均値を記録します。
家庭血圧(HBPM)の場合でも、これくらい綿密に測定や記録をすれば正確になりそうです。
ステージ分類と降圧剤の関係も書かれていますね。
「ステージI高血圧」
診察室血圧が140/90〜159/99mHg
かつ
自由行動血圧(ABPM)が135/85〜149/99mmHg
の場合はステージI高血圧と分類されます。
「ステージII高血圧」
診察室血圧が160/100mmHg以上
かつ
自由行動血圧(ABPM)が150/95mmHg以上
の場合はステージII高血圧に分類されます。
「降圧剤の使用」
ステージI高血圧では降圧剤を処方していはいけない。
ステージII高血圧で
かつ
高血圧による臓器障害を軽減するために降圧剤を使用するとされています。
日本では、ステージI高血圧でも降圧剤が処方されているのではないでしょうか?
では、降圧剤以外の血圧管理の方法はあるんのでしょうか?
よく言われることですが、運動と食事、生活習慣などです。
これらについてもご説明しましょう。
脳梗塞予防への血圧管理を運動で行う
スローランニングによる血圧の変化
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
こちらの図は、「高血圧の9割は正常です」の著者である、大櫛陽一 先生が本の中で紹介されているものです。
ご自身の長年に渡る血圧の推移を記録されたものですが、一時期にスローランニングという運動を取り入れた時に血圧が下がっていることがわかります。
軽めの有酸素運動や、入浴などで血圧が下がることは、比較的知られていることです。
スローランニングやウォーキングなどの有酸素運動は、脂肪燃焼ももたらすため、ダイエットにも適していると言えます。
大櫛先生の書籍は、以下のリンクから購入することができます。
脳梗塞予防への血圧管理を食事で行う
次は、食事についてです。
DASH食というものがあります。
DASHとは、Dietary Approach to Hypertensionの略です。
1997年、米国National Heart,Lung,and Blood Institute(NHLBI)がスポンサーとなったDASH共同研究グループにより提案されました。
そのポイントは、減塩と体内からの塩分排出効果のあるミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)と食物繊維を多く摂取する食事です。
そもそも、塩分の多い食事を摂るとナトリウム濃度が高くなります。
腎臓は、これを下げようとして水分の再吸収を増やしますが、それにより血圧が上がります。
それに対して、カリウムはナトリウムと競合する働きがあります。
カリウムを摂ると、ナトリウムが細胞が追い出されて水分量を減らします。
マグネシウムは、このカリウムの働きを支援します。
また、食事からのカルシウム摂取は、カルシウム不足を補うことで結果的に血圧上昇を抑えます。
食物繊維は、腸の働きを良くする効果があります。
このDASH食の効果に併せて、糖質制限を組み合わせることで、肥満防止にも取り組むのが新DASH食です。
以下は、新DASH食を日本人の食生活に当てはめた、新DASH食 日本人版と言えるようなものです。
新DASH食
大櫛陽一 「高血圧の9割は正常です」ダイレクト出版2024年
カロリーは維持しつつ、ナトリウムと炭水化物を減らして、脂肪やタンパク質、食物繊維やカリウムやマグネシウム、カルシウムなどの塩分排出効果のあるミネラルを増やすものなのですね。
血圧だけでなく、健康全般に良さそうです。
脳梗塞予防への血圧管理のため生活習慣を見直す
生活習慣についても触れておきましょう。
肥満
肥満を解決するだけで血圧が下がる人もいます。
前述の大櫛 先生のデータでは、BMIを1減らすと、収縮期血圧2mmHg低下するそうです。
肥満については、イメージ的にも血圧に影響しそうな印象があります。
アルコール
アルコールについては、即時的には血管を拡張させて血圧を下げます。
ただし、長期的に強いアルコールを摂取すると血管が硬化して血圧を上げるそうです。
良く言われますが、アルコールは適量なら良いのですね。
喫煙
喫煙については、タバコを長期的に1日50本吸うと収縮期血圧は4mmHg上昇するというデータがあります。
その最も大きな原因は、一酸化炭素が赤血球と結合することです。
ヘモグロビンとの結合力は、酸素よりも一酸化炭素の方が強いので、ヘモグロビンの酸素運搬力が低下してしまうのです。
そのように体内が低酸素状態になると、身体は血圧を上昇させて酸素を供給しようとするのです。
禁煙を実施しているオフィスでは、喫煙のオフィスよりも収縮期血圧1.41mmHg低いという報告もあります。
運動や食事ほどではありませんが、喫煙量をコントロールすることは血圧を下げる効果があると言えます。
最近は、喫煙者も大分減りました。
睡眠
睡眠に関しては、現在のところは明確には睡眠時間と血圧の間に因果関係があるとは言えません。
睡眠時間だけでなく、睡眠の質も重要と思われます。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸停止が繰り返されますが、この時に血圧が上昇します。
それに対して、持続的陽圧呼吸療法(CPAP)を用いることが知られています。
睡眠については、夜間勤務やシフト勤務も血圧を上昇させると言われています。
夜間またはシフト勤務中に短時間の睡眠をとると、血圧上昇が緩和されたという報告があります。
不規則に夜勤が入ると、食生活の乱れなども起きやすいです。
脳梗塞の予防のための血圧管理|薬に頼らずに血圧を下げる方法とは?のまとめ
脳梗塞予防への血圧管理は投薬以外で行うべきのまとめ
脳梗塞予防への血圧管理において、降圧剤にはリスクもあります。
超高齢者では、血圧が高い人ほど自立度が高いという報告もあります。
先ずは、正確な血圧の測定を行うことが必要です。
脳梗塞予防への血圧管理を運動で行うのまとめ
血圧を下げる運動としては、スローランニングやウォーキングのような軽めの有酸素運動が有効です。
脳梗塞予防への血圧管理を食事で行うのまとめ
血圧を下げる食事としては、新DASH食というものがあります。
これは、必要カロリーは維持しつつ、ナトリウムや炭水化物を減らします。
加えて、塩分排出効果があるカリウムやマグネシウム、カルシウムなどを増やすものです。
脳梗塞予防への血圧管理のため生活習慣を見直すのまとめ
脳梗塞予防では、血圧管理のために生活習慣を見直すことも重要です。
肥満については、BMIを1下げる毎に収縮期血圧を2mmHg下げることができます。
アルコールでは、長期的に強いアルコールを摂取し続けることは避ける必要があります。
喫煙や睡眠も血圧に影響を与えます。