目次
脳梗塞片麻痺では要介護度に応じてサービスを計画
梅子さん
明日は、お母様の退院日ですね。
おめでとうございます。
さくら先生
ありがとうございます。
ただ、これから在宅介護で不安ばかりです。
そうですね。
はじめてのことで大変ですね。
それでは、今回は脳梗塞片麻痺の介護や要介護度に関してお話ししましょうね。
脳梗塞片麻痺で介護サービスが必要な方が増えている
さくら先生
おかげさまで、片麻痺の症状は徐々に改善しているのですが、まだまだ、介護が必要な状態です。
そもそも、脳梗塞片麻痺では介護サービスが必要は方は多いのでしょうか?
その通りです。
脳梗塞などの脳卒中により介護が必要となるケースはとても多いものです。
次の図を見てください。
介護を要する者数,日常生活の自立の状況・介護が必要となった主な原因別
2019年 国民生活基礎調査の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
ご覧の通り、介護が必要になる原因の中で、脳卒中は認知症についで多い理由なのです。
同じ脳卒中でも、脳梗塞は高齢者多く、近年は特に増加傾向となっています。
本当ですね!
こんなに多いのですね。
脳卒中の中でも、脳梗塞は高齢者に多く、近年は特に増加傾向となっています。
脳梗塞には、いくつかの理由がありますが、主には脳の動脈に血栓(けっせん)ができて血流が滞ることによるものや、心臓などの他の部位から運ばれた血栓が脳の動脈の流れを止める塞栓(そくせん)などがあります。
たしか、昔は高血圧による脳出血が多かったと聞いたことがあります。
最近は、国民みんなが血圧を気にするようになって減ったのですね。
その代わりに、高齢化に伴い脳梗塞が増えたのですね。
その通りですね。
実際には、無症状の脳梗塞も多いため、MRIなどの検査をして初めて気がつくということもあります。
そして、脳梗塞がおこる部位によって様々な症状が出現することも知られています。
その代表的なものが、身体の半身が麻痺をおこす片麻痺です。
脳梗塞による片麻痺とは
脳梗塞の代表的な症状に片麻痺があります。
片麻痺は、身体のどちらかに半身麻痺を生じるものです。
麻痺は、軽度から重度まで様々です。
母の場合は、上下肢とも麻痺があります。
感覚は手指や足などで鈍くなっているようです。
脳の中では、運動神経と感覚神経はかなり近い場所を通っています。
そのため、運動麻痺には感覚麻痺を伴うことが多いものです。
しかし、中には、運動のみの麻痺の場合や感覚のみの麻痺の場合もあります。
また、脳梗塞の部位によっては、片麻痺ではなく運動失調という別の症状を呈することもあります。
複数の脳梗塞により、さらに複雑な症状をきたすこともしばしばあります。
母は右側の脳梗塞で、左片麻痺になりました。
麻痺は、手や指で強いです。
腕は何とか動かせるのですが、指はまだ動きません。
他の患者さんも同じような症状が多いのでしょうか?
たしかに、そのような症状の方は多いですね。
では、その理由について、図を用いてご説明しましょう。
この図は、人間の大脳から身体への運動神経の流れを示したものです。
右の大脳から始まった、運動神経が、ある所で交差して最終的には左側の脊髄に達していることがわかります。
横の女性のイラストは、左片麻痺のモデルです。
左の腕が曲がって、脚には装具を装着しています。
典型的な左片麻痺のモデルと言えるでしょう。
片麻痺の全員が、このような典型的な麻痺になる訳ではありませんが、脳梗塞の後発部位である内包と呼ばれるところが侵されるとこのような状態になりやすいのです。
この右の大脳から交差して身体に至る神経の経路は、左半身全体に影響していますが、特に上肢や下肢などの特に末端部に強く作用します。
そのため、片麻痺では上肢の中でもは手指、下肢では足首から先の麻痺が目立つ結果となります。
私の母に似ています。
腕はもう少し伸びていていますけど、手指はあまり動きません。
下肢はもう少し良いのですが、イラストのように脚には装具を着けていて、未だ杖をついています。
はい、そうですね。
でも、片麻痺の問題はこれだけではありません。
次の図も見てください。
こちらには、A B Cの3つの図があります。
Aでは、前の図と同じように片側の大脳から神経の流れが始まっています。
しかし、前の図とは異なり交差せずに真っ直ぐに下降して、頸髄(けいずい)のところで左右の両方に枝分かれをしています。
さらに、B Cでは、大脳ではなく、橋(きょう)と呼ばれるところから神経の流れが始まっています。
そして、そこから真っ直ぐに下降する経路もありますが、左右に枝分かれする経路もあります。
これは、かなり複雑です。
なんだか、頭が混乱してしまいます。
ごめんなさい。
少し、専門的すぎましたね。
要点だけをいいますね。
つまり、左右どちらかの大脳から始まった神経は、反対側に交差するだけではなく、同側の身体にも下降してゆきます。
そのため、結果的には、脳梗塞になると左右両側の身体に不自由さが生じるのです。
たしかに、一番影響を受けやすいのは、お母さんのように上肢や下肢の特に末梢部になりやすいのですが、その背景では体幹や非麻痺側の上下肢にも何らかの不自由さが出現しやすいのです。
今、さくら先生が非麻痺側と呼んだのは、健側ではないという意味なのですね!
その通りです。
お話しした通り、大脳から始まる神経の流れを見てゆくと、完全な健側ということはあり得ないのです。
正確には、非麻痺側と呼ぶべきなのです。
母のリハビリの先生が、よく体幹が弱いとご指摘されています。
母も、よく未だ身体全体が重いとか良い方の脚も弱くなったと言います。
それらも、神経の流れの作用によるものなのですね。
はい、そうです。
このように、脳梗塞による片麻痺の症状は複雑な面があります。
この複雑さゆえに、脳梗塞片麻痺は要介護状態となりやすいのだと言えるのです。
もしも、脳梗塞片麻痺の症状が、麻痺側の上下肢にみ限局しているとすれば、これほど要介護者になることはないのです。
お母さんのように左半身麻痺であれば、多くの日常生活は右手でできます。
また、健側の脚だけでも、杖をつけばかなり早くから歩けるようになった筈ですよね。
でも、実際には母は歩く練習を始めるまでに数ヶ月間の時間が必要でした。
体幹も弱く、バランスに乏しかったので、当初は右手を自由に使うこともできませんでした。
たしかに、そうでしたね。
後でご説明しますが、この症状の複雑さがあるからこそ、脳梗塞などの脳卒中では要介護者が多いのです。
要介護度の判定に用いられる調査とは、要するに介護の手間を見ているものです。
介護の手間とは、見方を変えると日常生活の自立度の不十分さとも言えますね。
体幹や非麻痺側にも不自由さがあることは、結果的に介護の手間を増やすことになってしまうのですよ。
介護保険制度とは
今日のメインテーマは要介護度についてですが、その前にその根幹となる介護保険制度についても簡単にご説明しますね。
よろしくお願いします!
2000(平成12)年度から始まった介護保険制度は、現在では当たり前のものとなりました。
日本では、かねてより高齢社会の到来が叫ばれていました。
一方で、医療費は日本の財政を圧迫していると言われていました。
その、象徴的な問題の中に「社会的入院」と呼ばれるものがありました。
社会的入院ですか?
脳梗塞などの病に倒れた後、入院などにより病状は安定したものの介護が必要な状態となったため自宅に退院できない患者さんが増えたことに起因して、特に治療の必要が無いケースが長く入院し続けなければならないことなどを指した用語です。 この社会的入院の急増が、医療費高騰を招き日本の財政を圧迫しはじめたのです。 介護保険制度立ち上げの背景には、このような国家的な課題が存在したのです。
発足から20年以上が経過した介護保険制度ですが、現在では本当に無くてはならないものとなりました。
医療が早期発見・早期治療・早期社会復帰を進める中、この介護保険との連携がなければ、日本の医療介護は全く立ち行かないものといえます。
脳梗塞片麻痺の要介護度の決め方
要介護認定の流れ
そもそものこととして、介護保険のサービスを受けるには手順があります。
それは要介護認定を受けるという手続きを踏むことです。
要介護認定は、申請から30日以内に判定されます。
様々な介護保険サービスを受ける前に、先ず少々の手間と期間が必要なことを覚えておいてください。
母の場合もそのくらいの時間がかかりました。
入院直後に、ソーシャルワーカーさんから早めに申し込みをするように勧められました。
回復期リハビリテーション病棟の入院期間にも限りがありますので、早めの手続きがお勧めですよね。
しばしば、患者さんからは、もう少し病状が落ち着いてから申請したいと言われることもあります。
しかし、早めの申請は、患者さん側にもメリットがあるんです。
そうなんですか?
早めに認定を受けると、人にもよりますが、退院時よりもやや重度に判定される場合があります。
仮に、早めに申請して要介護度2になったとします。
それから、リハビリを頑張って、退院時には要介護1相当まで回復したとします。
そうすると、サービスの限度額に余裕ができますので、退院直後の不安な時期にはサービスを多めに計画することができます。
なるほど、たしかにそうですね。
もちろん、必要なければ利用しなければ良いだけのことです。
ただし、介護度が重くなると、各サービスの単価が上がってしまうディメリットもあります。
判定と現在の状態があまりに合っていない場合は、区分変更申請などを行うこともできます。
疑問点がある場合は、直ぐに担当のケアマネージャーに尋ねるようにしてください。
それは、大切なことですね!
介護保険の申請後に、訪問調査が行われます。
現在の心身の状態の把握が行われます。
入院中の場合は、病院に訪問調査員が訪れて行います。
それを基にして、先ずはコンピュータによる一次判定が行われます。
一次判定自体は、全国共通のものなので、全く公平なものです。
次に介護保険審査会による二次判定が行われ、これが最終決定となります。
介護認定審査会は、医療・介護・福祉の学識経験者から構成されます。
コンピュータソフトだけでは分からない介護の課題などを、専門的な観点を加味して、時には一次判定の結果を修正します。
この二次判定については、重要なことがあります。
二次判定を左右する情報は、主治医の意見書の内容や訪問調査員の特記事項などが主です。
そうなんですか?
はい、そうです。
ですから、なるべく普段から主治医には介護の不安や問題を相談しておいてください。
それから、訪問調査員にも同じように調査項目以外にも困りそうな点を話しておいてください。
それにより、二次判定がより正確に行えるからです。
要介護認定については、詳しいサイトがありますので、是非参考にしてください。
要介護度は介護の手間の時間により決まる
いよいよ、要介護度についてですね!
そうですね。
要介護度決定の仕組みについてお話ししますね。
下の図を見てください。
区分 | 要介護認定等基準時間 |
---|---|
非該当 | 25分未満 |
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2・要介護1 | 32分以上50分未満 |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
この図は、要介護度の区分とその判定に用いられる、要介護認定等基準時間についてです。
さくら先生!
要介護は、時間によって決まるのですか?
何の時間でしょうか?
介護の手間を時間に換算したものです。
介護保険によりサービスを受けるまでの流れを簡単に言うと、要介護認定の審査を受けて介護の手間の状態により要支援1から要介護5までの7段階に認定された場合において、ケアマネージャーが介護計画(ケアプラン)を立てた後に保険サービスを受けることが可能になるというものです。
要支援1から要介護5までに認定される際の、具体的な基準が要介護認定等基準時間なのです。
繰り返しますが、要介護認定等基準時間とは、介護の手間を時間に換算したものです。
しかし、実際の介護に要する時間という意味ではありません。
そうですよね。
安心しました。
実際の介護の時間は、そんなに簡単には計算できないですから・・・・
訪問調査員による訪問調査での74項目の調査に基づき、コンピュータの一次判定を経て算出されるものです。
各介護度は、1分間タイムスタディという手法により介護の手間を便宜上時間に換算して判定されます。
このコンピュータの判定ソフトの基は、樹形モデルと呼ばれるものです。
この樹形モデルは、一般に公開されていますので、実際に手作業で介護の手間を時間として計算することも可能なものです。
しかし、その仕組みは非常に複雑です。
どんな感じなのですか?
例えば、食事に関する介護の手間を計算する場合、単に食事動作の介護だけでなく、認知面の能力や移動の能力なども加味して計算することになっています。
それを、複数の項目について行ったものを最終的に集約しています。
そのため、一見すると同じ程度に動作介助が必要なケースにおいても、認知機能面の微妙な違いや他の動作の状態などにより最終的な時間が変わることがあります。
一方で、認知症などで片時も目が離せないようなケースでは、見た目より重度に判定される傾向にあります。
なるほど、介護する立場からみると良いことですよね。
さらに、このコンピュータの一次判定の結果を複数の専門家からなる介護認定審査会での二次判定により最終的に決定します。
その際には、専門的観点から判定を修正することが多々あります。
しかし、そこには、主観的になりすぎないように根拠が必要となります。
その際の、根拠となるのは、主治医の意見書による特記事項や訪問調査員の調査内容の記載内容などです。
これらを深く読み取ることで、コンピュータには判定できないような実際的な手間を勘案するというシステムなのです。
本当に手の込んだシステムなんですね。
このような複雑な作業の下に最終的な要介護度が判定されます。
やや機械的とも受け取れるコンピュータソフトのアルゴリズムに加えて、専門家による実際の医療・介護・福祉面から見た介護の手間を考慮することになります。
しばしば、現場でも、同じような自立度の方々の判定結果が異なるというような意見が聞かれます。
それは、単に機能的な自立度以外に、総合的に見た結果によるものなのだということを知っておく必要があります。
はい。
わかりました。
いずれにせよ、上記の要支援1〜要介護5に該当する場合のみが、介護サービスを受ける対象となります。
非該当(自立)と判定された場合は、介護サービスは受けられませんが、地域の介護予防事業などを利用することが可能となります。
介護保険から漏れたケースも、けっして置き去りにはされないということなんですね。
要介護度により利用できるサービスの限度額が決まる
このように、複雑な過程を経て決定されるのが要介護度です。
そして、その要介護度ごとに区分支給限度額が決まっています(下図)。
要介護度 | 支給限度額(円) |
---|---|
要支援1 | 50,320 |
要支援2 | 105,310 |
要介護1 | 167,650 |
要介護2 | 197,050 |
要介護3 | 270,480 |
要介護4 | 309,380 |
要介護5 | 362,170 |
最も重度の要介護度5の区分支給限度額は、36,217単位(362,170円)です。
最も軽度の要支援1では、5,032単位(50,320円)となっています。
介護サービスには、全て給付単位数が定まっています。
給付単位数とは、医療でいうところの保険点数のことです。
各要介護度ごとの区分支給限度額の範囲内であれば、介護保険サービスが給付単位数で定率負担内で利用できます。
ちなみ、介護保険サービスの利用負担割合は、現時点では収入などに応じて1割~3割とされています。
脳梗塞片麻痺の要介護度と自立度の関係
要介護度と自立度の関係とは
ここまで、脳梗塞片麻痺と要介護度について述べてきました。
折角ですから、ここからは、要介護度と自立度の関係や要介護度を改善する方法についてもご説明したいと思います。
そうか!
要介護度は改善する可能性があるのですね!
そうです。
全ての方に当てはまるとは言えませんが、脳梗塞などによる片麻痺の発症からそれほど期間が経過していない場合や、比較的若年であったり、リハビリへの意欲が高いケースなどでは十分に可能性があります。
医学的なリハビリには、いくつかの日常生活の自立度を評価する方法があります。
この代表的なものは、FIM(機能的自立度評価法)やBI(バーサルインデックス)と呼ばれるものなどです。
これらは、医療や介護のリハビリにおいて非常に重視されています。
FIMもBIも、食事や排泄、移動などの日常生活活動の自立度を評価する方法です。FIMは回復期リハビリテーション病棟で、BIは介護保険リハビリでそれぞれ重視されています。FIMについては、国際的な評価方法などでデータベースを用いて国別で比較することも可能です。BIについては、比較的簡単で短時間にて行えることが特徴です。
少し難しそうですね。
たしかに、専門的で難しい面はあります。
特に、FIMを使いこなすには、専門職でも少しトレーニングが必要です。
ただ、リハビリの成果がリアルに反映される重要な評価法なので仕方ありませんね。
例えば、回復期リハビリテーション病棟では、FIMをリハビリテーション実績指数の計算に用います。
実績指数は、FIM以外にも在院日数も用いられます。
実績指数により、入院料の診療報酬が異なるぐらいにFIMは重視されています。
介護保険でもBIが日常生活の標準的な評価方法として利用されています。
これらのデータは、厚生労働省のデータベースにも蓄積されるぐらい有用なものなのです。
実は、FIMやBIは要介護度と高い相関関係にあることがわかっています。
下の引用は、ある研究報告についてです。
要介護度とBIには高い相関関係があると報告しています。
「要介護度とBIは高い相関関係にある」
厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)分担研究報告書
「介護保険制度における要介護認定区分と Barthel Index との相関関係に関する研究」より https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192111/201916007A_upload/201916007A202005200940500770012.pdf
前述のように、非常に複雑な手法で決定される要介護度ですが、実はリハビリテーションの評価方法とも非常に相関性が高いものです。
つまり、リハビリにより日常生活自立度を向上させることで、要介護度は軽くなる可能性があるのです。
脳梗塞片麻痺の要介護度とは、リハビリの有無や内容により変化しうるというものなのです。
これは、リハビリをしっかり頑張らないといけませんね!
要介護度改善に必要な介護サービス
脳梗塞片麻痺へのリハビリは、生活自立度の向上を促し要介護度を改善する可能性があります。
では、介護保険のリハビリにはどのようなものがあるのかをご紹介しましょう。
はい、よろしくお願いします!
しっかり勉強します!
介護保険サービスの種類は大変多いものです。
介護保険サービス自体には、全て自立支援の理念があります。
しかし、ここでは専門職によるリハビリが提供されるサービスについてご説明しましょう。
訪問型、通所型、施設型に分けてご紹介します。
訪問型
訪問型は、訪問リハビリテーションです。
自宅などへ訪問して、実際の生活環境の中でリハビリを行います。
訪問リハビリには様々なメリットがあります。
【生活の中での課題や問題が把握しやすい】【生活の中での実際練習が行える】【通所や施設サービスに比べるとリハビリ時間が長めに設定される可能性がある】など
近年は、生活リハビリという言葉が良く使われます。
「生活の中でのリハビリ」、「生活の役に立つリハビリ」、「生活場面そのものがリハビリになる工夫」などの意味があります。
一般的には、生活空間と切り離された環境でのリハビリには、見落としがちなことがあります。
手すりや段差などの環境がリハビリ室や各自宅では大きく異なるからです。
生活環境が、バリアフリーか、そうでないかは大きな相違です。
また、比較的新しい家かそうでないかでは、廊下の幅や階段の傾斜角度が異なることがしばしばあります。
また、一口に自宅と言っても、それは必ずしも元の自宅を指さない場合もあります。
近年は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの、高齢者住宅へご入居される方は増えています。
これらは、契約した賃貸住宅でありながら、介護サービスが利用できるようなものです。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、施設ではなく在宅扱いなんですね。
それで、訪問リハビリなどの訪問系サービスが使えるですね。
ただ、全ての有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で訪問リハビリが利用できる訳ではありません。
これについては、担当ケアマネージャーへの確認が必要となります。
これは、重要な点ですね。
大変、勉強になります。
訪問リハビリの提供元は、主に2箇所からです。
正式に訪問リハビリテーションと呼ばれるものは、医療機関や老人保健施設から提供されるものです。病院や老人保健施設の理学療法士などが訪問します。最近では、老人保健施設からの訪問リハビリが増えています。入所中の顔見知りのリハビリ担当者が退所後も自宅へ訪問することが可能で、高齢者には優しいシステムといえます。
もう一つは、訪問看護ステーションからの提供です。これは、正確には訪問リハビリテーションではなく、理学療法士などのリハビリ専門職による訪問看護という位置付けです。しかし、内容そのものは前述の訪問リハビリと同じです。提供時間などに若干の差があるかもしれません。
通所型
通所型の通所リハビリ(デイケア)や通所介護(デイサービス)は、介護サービスの中でも多く利用されているものです。
特に通所リハビリは、理学療法士などのリハビリ専門職が一定数以上所属しています。 そのスタッフによる、直接的な個別リハビリが行われることが特徴です。 近年では、個別リハビリ以外にもリハビリマネジメントという考え方が普及しており、リハビリ専門職の考え方や技術などを介護職やご家族とも共有することが一般的です。 通所リハビリには、様々なリハビリ加算が存在します。 その種類によって、リハビリ内容も異なり、身体機能向けの加算の他、認知症向けの加算、生活行為に力を入れた加算などもあります。 通所リハビリの個別リハビリは、平均的に20分間程度です。 脳梗塞片麻痺のリハビリとしては、やや時間が短いことが難点かもしれません。
通所介護は、デイサービスという言葉で知られていると思います。 従来は、宅老所的な高齢者のお預かりサービスとして普及しました。 しかし、近年は自立支援やリハビリに力を入れています。 デイサービスなどの通所サービスは、利用時間を原則的に自由に選択できます。 これまでは、比較的長めの時間が人気でしたが、最近は短時間のリハビリ特化型が脚光を浴びています。 送迎付きで機能訓練のみ行って、早めに帰りたいという方が増えています。 今の通所介護は、ほぼどこでも機能訓練と自立支援に力を入れています。 ただし、通所リハビリとの違いがあります。おりえ それは、リハビリ専門職による個別リハビリが必ずしも提供されないことです。 軽度要介護者で、自分でマシーントレーニングを行えるような方々からは人気が高いです。 脳梗塞片麻痺で、麻痺の回復を目指したいというような方々の場合は、機能訓練内容に確認が必要かもしれません。
施設型
施設入所型としては、老人保健施設があります。 老人保健施設は、特別養護老人ホームと異なり、自宅退所などを目的とした中間的な施設です。 リハビリ機能が充実していると言われています。 実際に多くの老人保健施設では、個別リハビリに力を入れています。 入所3ヶ月間は毎日のリハビリ、長期入所でも週3回程度のリハビリを提供する施設が多いでしょう。 老人保険施設においても、全体的に自立支援の考え方が定着しています。 そのため、寝たきりや座りきりにしない工夫なども取り入れています。 回復期リハビリテーション病棟などで、回復が不十分だった場合などは、老健へ転所した後に在宅復帰を目指す流れとなります。
老人保健施設と特別養護老人ホームの違いは大切ですね!
要介護度を改善するリハビリのポイント
脳梗塞片麻痺の要介護度改善については、リハビリの内容も重要となります。
実際に、リハビリは提供する事業所の違いだけでなく、リハビリ担当者個人の違いも大きい面があります。
誤解しないでいただきたいですが、最低限のリハビリ内容については、日本全国で大きな差はありません。
ただし、脳梗塞片麻痺についてのリハビリ内容には少し差があると感じています。
介護保険リハビリにて、比較的ポピュラーなリハビリ内容がいくつかあります。
少し、具体的にいいますね👇
【関節可動域訓練と呼ばれるストレッチなどの他動運動 】 【筋力訓練】 *通所型でも施設型でも、大体個別リハビリの時間は20分間程度
限られた時間内で効率的に行うとこのような内容が多くなりがちでしょう。
しかし、脳梗塞片麻痺については、もう少し専門的な内容が必要となります。
ストレッチや筋力訓練は、麻痺側の上下肢や比較的動かしやすい健側側に行うことが主です。
しかし、脳梗塞片麻痺の問題は、脳梗塞による片麻痺とはで説明した通り、手足などの麻痺が目立つ部位以外にも体幹などの身体中枢部にもあります。
特に要介護度を改善するために、生活自立度を向上させるための機能的リハビリでは、体幹へのアプローチが重要だと考えます。
最近は、スポーツやダイエットなどにおいても、体幹筋のトレーニングが注目されているみたいですね。
脳梗塞片麻痺の日常生活動作のリハビリにおいても体幹の能力が重要です。
この体幹への機能訓練が不十分な状況では、いくら食事やトイレなどの生活動作訓練を一生懸命行なってもあまり成果が得られません。
貴重な個別リハビリの時間は、自主トレや介護職による機能訓練ではできないことをしっかり行うべきです。
いくら他動的ストレッチや健側の上下肢の筋力訓練を行っても、体幹の柔軟性や安定性が不十分な状況では成果が得られません。
体幹のリハビリの重要性について、一つ例をご紹介したいと思います。
脳梗塞片麻痺の体幹のバランスは、麻痺側だけでなく非麻痺側でも低下することが知られています。
少し、専門的な説明になりました。
要するに、脳梗塞などによる片麻痺では、麻痺側だけでなく、健側においても明らかにバランスが低下していることが明確なのです。
頼りの健側のバランスの不十分なんですね。
いくら健側の上肢で日常生活動作の練習しても、なかなか身につかない筈です。
そうです。
だからこそ、体幹へのアプローチが重要なんです!
脳梗塞片麻痺の要介護度を改善するメリットとは
自立度の向上により生活の質が高まる
先ほど、ご説明したように、脳梗塞片麻痺の要介護度と日常生活自立度には相関的な関係があります。
要介護度を改善することは、同時に日常生活自立度を向上させることにもなります。
介護保険理念には、リハビリテーションや自立支援が強調されています。
そのため、現在の介護サービスは基本的に、少しでも自立を支援することが求められています。
例をお話しします。
訪問介護の中に家事援助というサービスがあります。
イメージとしては、家政婦さんのように全ての家事を行うように思いますが、実はそうではありません。
最新の訪問介護の家事援助は、調理などを作ってあげるのではなく、利用者本人と一緒に作るような場面が推奨されます。
同様に、身体介護においても、できない動作を全介助で行うのではなく、できる動作は仮に時間がかかっても一人で行っていただき、できない部分のみを適切に支援することが求められます。
この理由は考えてみればわかりますが、過剰介助になってしまうと、徐々にできることまでが衰えてゆくわけです。
逆に、最低限の介助で見守ってあげれば、機能を維持できたり、むしろ向上に導くこともできるのです。
なるほど、重要な視点ですね。
このような自立支援の視点は、生活の質の向上にも寄与すると言われています。
生活の質はQOLとも呼ばれます。
生活の質とは、幅広い意味を持ちますが、ここでは、その一つの主観的満足度について考えてみます👇👇👇
介護費用が安くなる
国家的財政難と言われ、かつ高齢社会の日本では、医療や介護の費用を少しでも抑制することは大きな課題です。
また、言うまでもないことですが、介護費用の軽減は個人の財布にも優しいことです。
自立度が向上し、介護度が改善すると、結果的に同じサービス内容でも費用が軽減します。
次の図は、先ほどの要介護度別の区分支給限度額と1~3割の利用者負担額を表にしています。
要介護度 | 支給限度額 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
仮に要介護度5では、区分支給限度額の全額を利用した場合、毎月の負担額は、1割負担では 36,217円、2割負担では72,434円、3割負担では108,651円となります。
これが、要介護度が4に改善すると、1割負担では30,938円、2割負担では61,876円、3割負担では108,651円となります。
これだけで、毎月の負担が5,000円~15,000円安くなります。
毎月のことですから大きいですね。
また、訪問介護などの身の回りのお世話に関するサービスが減ると、さらに負担額が安くなることになります。
個人の負担軽減は大きなメリットですが、さらに言えば、自己負担額以外の7割〜9割は介護保険から支払われるのですから、国庫負担の軽減にもなります。
ひとりひとりの利用者が、リハビリなどを通じて介護度を改善することは、ひいては国家財政を救うことなるのです。
これからの日本においては、このような視点が大変重要になるでしょう。
脳梗塞片麻痺の介護度とは?日常生活自立度を改善するリハビリ方法のまとめ
脳梗塞片麻痺では要介護度に応じてサービスを計画のまとめ
脳梗塞片麻痺により、介護サービスが必要な方が増えているが増えています。
片麻痺では、手や足の麻痺が特に目立ちますが、実は健側や体幹にも何らかの影響があります。
梗塞片麻痺の要介護度の決め方のまとめ
要介護認定は、介護の手間を時間に換算して決める仕組みです。
コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定が行われます。
脳梗塞片麻痺の要介護度と自立度の関係のまとめ
要介護度と日常生活の自立度には強い相関関係があります。
リハビリなどにより、要介護度は改善する可能性があります。
脳梗塞片麻痺の要介護度を改善するメリットとはのまとめ
要介護度の改善に取り組むことにはメリットがあります。
生活の質の向上が期待できることに加えて、経済的な負担の軽減も大きいでしょう。