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片麻痺下肢の自主トレは体幹と連動させて訓練
片麻痺の下肢の自主トレは重要です。
下肢には様々な役割がありますが、やはりその代表は歩行、歩くことです。
歩行は、人間の尊厳にも関わる大事な機能です。
二本の脚で直立して歩くという行為は、人間以外にはできない運動です。
生まれたての赤ちゃんでも、個人差はありますが、一人で歩けるのは生後1歳から1歳半です。
通常、1歳までには、他の粗大運動や、指先を使うような運動は可能になっています。
歩行ができるのは、大体その後です。
それぐらい、順番的に歩行は難しい運動と言えます。
しかし、実は、歩行の基本的な要素である、両足を交互に出す動き自体は、生後間もない頃から見られます。
生まれた直後の赤ちゃんは、立たせれば両足を突っ張りますし、そのまま身体を少し前に傾けると両脚がバタバタと交互に動き始めます。
しかし、そのような基本的な動作が生まれつき備わっているにもかかわらず、実際に歩けるのは大分後になります。
この理由は、何でしょうか?
ここには、脳梗塞後の歩行の回復にも必要な要素があります。
それは、体幹の機能です。
赤ちゃんは、生まれてから歩行ができるまでの1年以上の間に、さまざまな動作を獲得する中で体幹の機能を高めています。
歩行の獲得や上達には、体幹の機能が重要なのです。
そのため、下肢の機能は体幹と連動させて訓練をしましょう。
ここでは、歩行につながる下肢と体幹の自主トレをご紹介いたします。
片麻痺下肢の自主トレは転倒予防と安全が重要
多くの患者さん達は、早く歩行訓練を沢山したいと考えがちです。
たしかに、1日も早い社会復帰のために歩く訓練を行うことは重要です。
しかし、一方で歩行には常に転倒のリスクがつきまといます。
病院や介護施設などでの、ヒヤリハットや医療事故の筆頭は転倒です。
そして、転倒は下肢などの骨折を招きやすいものです。
そのため、歩行が十分上達するまでの間は、転倒とそれによる骨折の予防に常に注意しましょう。
ここでの自主トレも、転倒防止を念頭に置き、先ずは安全な訓練を多くご紹介いたします。
座っている時にいつも下肢を正しい位置にしておくことの重要性
先ずは、転倒の危険性が少なく、簡単に下肢の訓練になる方法を理解しましょう。
それは、正しい姿勢で座ることです。
脳梗塞などの脳卒中後で、歩行ができるまでの期間は、車椅子や椅子で過ごすことが多くなります。
そのような時にでも、正しい姿勢で座ることが下肢の訓練にもなります。
意外かもしれませんが、これは重要かつ基本的なことです。
これは、すでに歩行が可能な方にとっても同様です。
では、下肢や体幹の訓練にもなる正しい座り方を確認しましょう。
正しい座位姿勢が下肢の自主トレになる理由
下肢の機能というと、やはり歩行を思い浮かべます。
たしかに、歩くことは人間の尊厳にも関わる動作です。
人間が、数百万年前に類人猿から進化したきっかけも直立二足歩行でした。
しかし、下肢の役割は歩行に限りません。
さまざまな動作の中で、下肢は働いています。
特に、座った姿勢で重心移動をしたり両手を自由に使うような場面では、下肢は上半身の安定の土台となります。
そのような座った姿勢でも、下肢の運動を常に意識することで訓練になります。
実は、私たちが行う正しい座位姿勢は、運動学的に見ると少し難しい動作です。
例えば、背中を丸くして楽に座った場合と比較してみると、背中を伸ばした正しい姿勢の方が持続することが大変に感じます。
それは、背中を伸ばすことで重心の位置が少し高くなり、後ろに偏るからです。
そのような姿勢では、より体幹の働きが必要となり、少しの重心移動に対しても全身がバランスをとる必要性が高まります。
ほんの僅かな姿勢の変化ですが、身体には意外と大きな影響があります。
重心とは、止まった姿勢であっても全体重がかかる場所です。
体重60kgの人なら、60kgすべてが影響します。
そして、少し動くだけでもその負荷は増えます。
重心の位置は大体骨盤付近ですので、下肢には常に体重+αの負荷がかかっているのです。
その負荷を効果的に下肢のトレーニングに応用することが、正しい座位の意義なのです。
正しい座位姿勢の具体例
適切な高さの椅子を選ぶ
先ずは、適切な高さの座面の椅子を選ぶ必要があります。
適切な高さ座面とは、膝を直角に曲げて座った時に、踵から膝の付け根までの高さです。
これが、高すぎても低すぎても良くありません。
高すぎる場合は、両足が床に着かない場合もあり危険です。
引くすぎる場合は、お尻の位置が膝よりも低くなるため立ち上がりの筋力が余計に必要となります。
また、低い椅子に座ると、一般的には重心が後ろに偏るため、背もたれにもたれやすくなります。
このような姿勢では、体幹の筋肉が働かないばかりか、円背などの不良姿勢を助長しやすくなります。
もっと良い座面の高さを選択しましょう。
車椅子は、移動のためには便利な道具です。
しかし、車椅子は、座るための椅子としては不十分です。
例えば、フットレストと呼ばれる足のせに麻痺側の足をのせた場合、膝の位置が座面より高くなります。
そのため、止まって休憩などをする時には、足をフットレストから床に下ろすことをお勧めします。
これにより、適切な椅子と同じような高さを実現することができます。
背もたれから背中をはなして伸ばす
リハビリにとって正しい座り方では、背中を背もたれからはなしましょう。
そして、背中を伸ばしましょう。
このように真っ直ぐ背中を伸ばす姿勢は、健常者にとっても少々辛い面があります。
それは、体幹の筋肉である背筋や腹筋を持続的に使い続ける姿勢だからです。
意外かもしれませんが、腹筋は身体を意図的に曲げる時だけでなく、このように綺麗に伸展する時にも重要な筋肉です。
背もたれから背中をはなして伸ばす姿勢は、それぐらい体幹の機能向上に役立つ姿勢です。
横から見て股関節と膝関節と足関節はほぼ直角
適切な高さの椅子に座り、背中をまっすぐ伸ばした姿勢は、横から見ると股関節と膝関節、足関節がほぼ直角になります。
自分の姿は、意外と自分では分からないものです。
誰かに見てもらったり、鏡に映して確認すると良いでしょう。
写真で見ると、この座り方が実は決して楽な姿勢ではないことが分かります。
一般に、重心の通る線は、身体の真ん中にある方が安定感があります。王が
しかし、この座り方では、上半身の重心が後ろ側に偏っているのが分かります。
そのため、体幹の筋肉の働きが必要となり、長く続けることが結構大変なのです。
ただ、体型というものは人それぞれです。
生まれつき、猫背の人もおられると思います。
ここでは、可能は範囲で一人一人に合った良い姿勢を考えることが大事です。
少し前傾姿勢をとり下肢に体重をかける
ここからは前傾姿勢をとり、下肢に体重をかけます。
なるべく背中を伸ばした正しい姿勢のままで、少し体幹を前に傾けます。
この時に、注意点があります。
それは、踵の位置を膝よりも少し後ろに下げることです。
これまでは、膝のほぼ真下に踵があったと思います。
それに対して、ここでは、踵を膝よりも少し後ろにします。
膝や足首の動きが自分で行えない場合は、誰かに助けてもらう必要があるかもしれません。
また、足首に装具をつけている場合は、足首自体が動かない可能性もありますので無理をしないでください。
この訓練は、立ち上がり動作の準備にもなります。
踵を少し引き、膝をやや鋭角にします。
背中を伸ばしたまま少し前傾姿勢をとります。
前傾姿勢の程度は、太ももの筋肉の収縮がわかる程度が理想です。
可能であれば、手を太ももに添えて筋肉の収縮を確認してみましょう。
少しづつ、前傾を角度を増やしてみましょう。
徐々に可能となれば、できれば立ち上がりの直前まで前傾してみます。
前傾に伴い太ももが開いたり閉じたりしないようにする
前傾姿勢のの時には、注意点があります。
それは、前傾の際に太ももが開いたり閉じたりしないことです。
これは、特に麻痺側の下肢に言えることです。
人にもよりますが、多くの場合、麻痺などで筋力が低下している場合には、太ももの位置を中間に保ち難くなります。
主に男性では、膝が外を向くように太ももが開きやすいことがあります。
女性では、膝が内向きとなり太ももが閉じてしまうこともあります。
可能な限り、左の写真のような正しい位置を保つように心がけてください。
片麻痺下肢の自主トレになる座り方のまとめ
片麻痺下肢の自主トレは体幹と連動させて訓練のまとめ
片麻痺の下肢の自主トレは重要です。
歩行の獲得や上達には、体幹の機能が重要なのです。
そのため、下肢の機能は体幹と連動させて訓練をしましょう。
片麻痺下肢の自主トレは転倒予防と安全が重要のまとめ
病院や介護施設などでの、ヒヤリハットや医療事故の筆頭は転倒です。
自主トレも、転倒防止を念頭に置き、先ずは安全な訓練を行います。
座っている時にいつも下肢を正しい位置にしておくことの重要性
先ずは、転倒の危険性が少なく、簡単に下肢の訓練になる方法を理解しましょう。
それは、正しい姿勢で座ることです。
正しい座位姿勢が下肢の自主トレになる理由のまとめ
重心とは、止まった姿勢であっても全体重がかかる場所です。
そして、少し動くだけでもその負荷は増えます。
重心の位置は大体骨盤付近ですので、下肢には常に体重+αの負荷がかかっているのです。
その負荷を効果的に下肢のトレーニングに応用することが、正しい座位の意義なのです。