リハビリと尊厳の回復

ハートに描かれた自尊心の文字

リハビリは尊厳を取り戻す重要な過程

リハビリは、人の尊厳を取り戻す過程であると言われます。

PT OT STのリハビリは、単に機能回復のためのみではなく、実は全人間的な復権という意味が込められています。

人には、進化の歴史があります。

それは、人が約600万年前に類人猿から進化した時から始まります。

それまでは、主に樹上で生活していた類人猿達が、何かのきっかけで地面に降りました。

樹上では、目の前にあった木の実や果物は、頭の上へと変わりました。

そこで、2本の脚で立って手で食べ物を採取するようになりました。

脚は徐々にしっかりとして、脊柱も伸びて現在の直立二足歩行へ発達しました。

以前は、雲梯のように両手で移動していたものが、移動は脚に任せられるようになったため、両手はさらに進化しました。

器用に指を操作できるように、腕や手の構造も徐々に変化しました。

そして、道具を作ったり操作するようになると、利き手と非利き手の役割分担も進みました。

口は、食べることに加えてコミュニケーションのツールも兼ねるようになりました。

利き手を司る脳が発達し、言語中枢も近くに確立したことにより、心の中身を文字や言語で伝えることが可能となりました。

そして、これらは現在も尚、国や地域や人種などの間でさらに熟成を深めて続けています。

それぞれの文化の中で、歩き方も道具の使い方も言語も異なります。

例えば、元々農耕民族の日本人は百数十年前までは、少し腰を落として身体の回旋を使わない歩き方が主流だったと言われます。

また、食事も昔は粥状のものや雑炊が主流だったため、お腕を口につけて短い2本の箸でかきこむように食べていました。

その名残で、現在でもお茶腕を持って食べることが作法となっています。

一人一人の脳は、せいぜい1.5kg程度としても、その中には数百万年間蓄積されてきた進化の歴史が刻まれています。

だからこそ、突然、歩くことや手の機能や言葉を失った時に大きく尊厳が傷つくのです。

そして、リハビリの訓練は失った身体機能と共にその人の尊厳の回復になる必要があるのだと思います。

しばしば、患者さんが初めて一人で歩行できるようになった時や、初めて指が動き始めた時などに心の底から感激されることがあります。

それが、未だ実用的でなかったとしても、本当に感動されていることが伝わってくることがあります。

そんな時は、リハビリを行う我々の心も感動に包まれます。

そして、この仕事に就いて本当に良かったと思います。

このような時は、実用的か否かの考察は後回しです。

只々、一人の人が身体機能と同時に心の尊厳も取り戻しつつある姿に感動するのです。

どんなに時代が変わっても、脳梗塞などへのリハビリのあるべき姿は常に変わらないのだと思います。

尊厳回復へのPT OT ST

リハビリ専門職には、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)があります。

近年は、高齢社会であることから、PT OT STの名前の認知度はかなり上がっているのではないでしょうか?

日本においては、PTとOTについては、国家資格制度ができてから既に50年以上経過しています。

STについては、昔は未だ配置していない病院も多かったようですが、現在はかなりの医療機関に所属しています。

かつてから、PTとOTについては、その違いが分かりにくいという意見を聞きました。

たしかに、一見すると同じようなことを行っているように見えます。

また、この両職種の業務内容は、分野や時代の流れによって少しづつ異なっています。

簡単に言うと、PTは歩行などの移動や基本的な動作、OTは日常生活動作などの応用動作、STはコミュニケーションや摂食訓練などを中心に行います。

しかし、業務分担については、厳密な境目はありませんので、例えば、OTでも歩行訓練や食事訓練を行うことは良くあることです。

PT OT STのリハビリの大切さ

時代の流れにより、PT OT STの仕事内容も少しづつ変化してきました。

しかし、一貫して大切なことは変わらないと思います。

それは、この3職種のリハビリ内容は、人の心と身体の支援であることです。

身体の支援については、分かりやすいと思います。

それぞれのリハビリ内容が、身体のいろいろな部分に及ぶからです。

では、心の支援とはなんでしょうか?

それは、身体などの障害により二次的に傷ついた人としての心に対してです。

脳梗塞などの脳卒中により片麻痺などになった場合、仮に一時的であったとしても、身体機能を失ったことに心も傷つきます。

初めて車椅子に乗せられた時の、他人から見下ろされる視線の痛さ。

歩けなくなったことによる、深い喪失感。

手や指で物が操作できない時のもどかしさ。

話せなくなった時の無力感など。

挙げればキリがないくらいあります。

そこに具体的な支援を行うのが、PT OT STのリハビリです。

患者さんが障害を受け入れることを障害受容と言います。

しかし、当事者にとって障害を受容することは決して容易なことではありません。

いくら、口で説明をされても納得できないこともあるでしょう。

それに対して、PT OT STの訓練は、実際の体験を通じて回復の限界を悟っていただく機会にもなります。

ある意味、それは辛い経験でもあります。

しかし、一方的な説明のみと異なり、共に回復を目指すという視点に立ち、成功も挫折もともに分かち合うという姿勢は大事です。

そのような、医療従事者の態度こそが、尊厳の回復を大切にすることにもなると思います。

リハビリと尊厳の回復のまとめ

リハビリは尊厳を取り戻す重要な過程のまとめ

リハビリは、人の尊厳を取り戻す過程であると言われます。

PT OT STのリハビリは、単に機能回復のためのみではなく、実は全人間的な復権という意味が込められています。

尊厳回復へのPT OT STのまとめ

簡単に言うと、PTは歩行などの移動や基本的な動作、OTは日常生活動作などの応用動作、STはコミュニケーションや摂食訓練などを中心に行いますが、業務分担については、厳密な境目はありませんので、例えば、OTでも歩行訓練や食事訓練を行うことは良くあることです。

PT OT STのリハビリの大切さ

それに対して、PT OT STの訓練は、実際の体験を通じて回復の限界を悟っていただく機会にもなります。

共に回復を目指すという視点に立ち、成功も挫折もともに分かち合うという姿勢は大事です。

そのような、医療従事者の態度こそが、尊厳の回復を大切にすることにもなると思います。

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