脳梗塞の指先へのリハビリを解説|ストレッチよりも効果的な方法とは

ハニーワちゃん

さくら先生!

大変です!

さくら先生

どうしたの?

ハニーワちゃん

ハニーワちゃん

私のおじいちゃんが脳梗塞になりました!

さくら先生

それは大変ね!

大丈夫なの?

ハニーワちゃん

ありがとうございます!

幸い、命に別条はなかったのですが、少し後遺症が残りました。

脚は歩けるように回復したのですが、上肢に麻痺が残っているんです。

医師からは、特に指先や手は治りが悪いので、早めに良い方の片手でなんでもできるように練習しなさいと言われています。

手はもう改善しないのでしょうか?

さくら先生

たしかに、一般的には上肢は下肢よりも回復が難しいと言われています。

しかし、麻痺の状態にもよるし、一概に全てが回復しない訳ではありません。

では、今回は上肢や手指のリハビリについて解説しましょう!

脳梗塞後遺症で多い指先の麻痺

脳梗塞では片麻痺がおきやすい

脳梗塞などの脳卒中の後遺症として多いものに片麻痺があります。

片麻痺とは、左右いずれかの半身に麻痺が生じることです。

麻痺は、運動麻痺だけでなく感覚麻痺も生じます。

ただし、脳の障害は非常に複雑です。

病巣の場所によっては、片麻痺ではなく四肢麻痺になったり、運動失調と呼ばれる症状をきたすことも多くあります。

よって、今回は指先や上肢の麻痺をおこしやすい片麻痺を想定してお話をすすめてゆきましょう。

典型的な麻痺は手指と足首

さくら先生

脳梗塞などの脳卒中の片麻痺では、麻痺が目立つのは上肢と下肢です。

さらにその中でも、典型的に麻痺が強くなるのは手指と足首であることが多いものです。

その理由を下の図を参考にしてご説明します。



内側運動制御と外側運動制御

高草木薫 脊髄外科(2013.12)27号3巻208-215
さくら先生

この図は、脳から身体に至る運動神経のつながりを説明したものです。

AとBがありますが、先ずは右側のBを見てみましょう。

さくら先生

Bの図では、脳の右半球から出発している神経の経路が、最終的には交差して反対側の左の方に下降していることが示されています。

人間のモデルでは、その際に左半身が支配エリアであることを表しています。

赤く示されている範囲です。

さくら先生

実は、このBの図は脳梗塞で片麻痺になった際に最も影響を受ける部位を示しています。

一般に、右の脳半球に脳梗塞などが起きると、左半身の麻痺になることが知られています。

ハニーワちゃん

なるほど!

よく脳と身体のつながりは、左右が交差すると言われますね。

さくら先生

人間のモデル図で赤く示されているところが麻痺の部位に相当します。

そして、濃い赤の手と足は、麻痺がより重度となる部位です。

つまり、指先や手指、足首などは麻痺が重度になりやすいと言えるのです。

さくら先生

勿論、Aの図で示している経路も影響を受けています。

しかし、この経路はBと異なり、反対側の身体のみを司るのではなく、左右両側の身体とつながります。

そのため、脳梗塞後にも完全に麻痺になることがなく、実際にはあまり目立たないのです。

よって、脳梗塞後遺症による片麻痺では、手指と足首の障害がどうしても目立つ結果となります。

脳梗塞後遺症では指先や上肢のリハビリが重要

指先や口は脳の中では広いエリア

このように、麻痺が重度化しやすい指先や上肢ですが、実は、脳の中では非常に広い領域を占めています。

ペンフィールドの脳マップ
ハニーワちゃん

うわあー!

さくら先生、この図は何ですか?

ムンクの絵のような人がいますよ!

さくら先生

上の図は、有名なペンフィールドの脳のマップ図です。

身体の各部位が、大脳皮質の運動野や感覚野にどのように分布しているかを描いたものです。

大脳皮質とは、このような運動や感覚以外にも、認知や行動といった人間にとってとても重要な機能を司るエリアです。

ハニーワちゃん

なんだかアンバランな人ですね。

顔や口が大きくて・・・・・

足は小さいですね・・・・

さくら先生

そうですね。

もし、このような人が実際にいたら奇妙ですね。

顔や口や手が大きくて、脚や体幹は小さいのですからね。

でも、ここで言いたいのは、脳の中では手や手指はそれぐらい沢山の神経細胞が関与しているということです。

さくら先生

つまり、手や手指が使われなくなるということは、大脳皮質の大部分を使わないということになります。

これを、脳の廃用と呼ぶ人もいるくらいです。

大脳皮質を中心に脳が廃用をおこせば、脳機能全体が停滞する危険性があります。

さくら先生

このような知識は、脳科学が発達した近年においては常識とされています。

しかし、とても残念なことに、リハビリ医学の中では無視されているといっても良い状況があります。

では、リハビリ医学の常識がどのようなことかをご説明します。

ハニーワちゃん

たしかに、最近は脳科学ブームですね。

それなのに、リハビリ医学ではあまり取り入れられていないのですか???

さくら先生

一般にリハビリ医学では、上肢や手指の麻痺はリハビリしてもあまり回復が期待できないという認識が根強くあります。

そのため、限られた時間やリソースを効率的に使用するために、回復の期待が少ない上肢や手指へのリハビリよりも、容易に改善しやすい、健側手を使った日常生活動作訓練が優先される傾向にあります。

さくら先生

この傾向は、特に近年では以前にも増して強くなりつつあります。

そのため、急性期や回復期などの脳の神経系の回復が活発な時期には、上肢手指は殆ど訓練されないという状況が生じやすくなるのです。

発症から数か月経ち、歩行などの日常生活が容易となった時点で、初めて上肢や手指機能のリハビリを積極的にしようとしてもすでに障害が固定されている可能性があるのです。

ハニーワちゃん

うーん!

それは残念なことですね・・

患者さんや家族としては辛いことです。

さくら先生

手や手指へのリハビリが重要な理由はそれだけではありません。

さらに、詳しく見てみましょう。

利き手指先と言語中枢は密接

さくら先生

脳の回復を重視する考えにおいて、さらに忘れてはいけないことがあります。

それは、利き手の指先と言語中枢が非常に密接な関係にあることです。

上肢手指の運動野と運動性言語中枢
https://www.ezmedlearning.com/blog/cerebral-cortex-lobe-anatomy を一部和訳
さくら先生

上の図は、脳を左側から見たものです。

上肢・手指の運動野と運動性言語中枢の位置関係を示しています。

ご覧の通り、上肢・手指の運動野と運動性言語中枢は非常に近い位置関係にあることが分かります。

ハニーワちゃん

本当だ!

さくら先生

左脳の運動野は右身体を司っているので、ここでは利き手である右手の運動野と言語中枢が近いということになります。

さくら先生

これは、想像すればお分かりかと思いますが、我々は言葉として考えたことを利き手で文字にします。

位置が近いということは、同時に神経的な連絡網が密接であるとも言えます。

さくら先生

しばしば、右片麻痺では失語症を合併することがあります。

一般に、失語症に対しては言語聴覚士が様々な言語訓練を行います。

それと同時に、手指のリハビリにより脳に情報を送ることで、言語と手指の神経連絡をより刺激する可能性があるとも言えます。

ハニーワちゃん

なるほど!

上肢や手指のリハビリと言語リハビリが連携して脳を改善するんだね!

指先の廃用は脳の廃用

さくら先生

医療では廃用症候群という用語があります。

これには、使われなくなったことで筋肉が萎縮したり関節が固まるようなことが含まれます。

先ほど触れたように、脳も使われなくなると廃用が起こることが分かっています。

有名なのは、上肢の切断によって使われなくなった手の脳神経細胞が、役割を失うことで顔などの別の機能に置き換わることです。 脳梗塞後に手を担当する脳の神経が廃用を起こすと、二度と手指への運動指令を出すことが出来なくなるのです。 これを防ぐには、なるべく早い時期から手のリハビリをしっかり行う必要があります。
さくら先生

繰り返しになりますが、現在のリハビリ医療では、実用化しない機能にはリハビリの時間をかけないようにするという考え方の下で、多くの患者さんが回復の機会を奪われている可能性があるのです。

指先や上肢のリハビリが進まない理由とは?

リハビリ=日常生活の自立という考え方の弊害

さくら先生

ここまでお話したように、現在の脳梗塞へのリハビリにおいては、指先などの上肢の機能回復は軽視される傾向にあります。

ここからは、その理由や背景について触れたいと思います。

ハニーワちゃん

よろしくお願いします!

さくら先生

先ずは、現在のリハビリ医療の考え方についてです。

リハビリには、いくつかの定義があります。

簡単に言うとそれらは、「リハビリとは日常生活の自立を目指す」というものです。

さくら先生

これ自体は、けっして間違っていません。

ただ、現在の解釈では、「日常生活の自立につながらないリハビリは後回し(あるいはしない)」というものです。

そのため、指先や上肢のリハビリが優先度が低いという結果になっています。

ハニーワちゃん

うーん、そうなんですね。

さくら先生

しばしば、これを正当化することとして以下のような説明が聞かれます。

「いつまでも機能回復に拘っているのは人生の無駄」

「機能回復への固執は全人間的なリハビリテーションではない」

などです。

さくら先生

一見すると、正しいことを言っているように聞こえます。

ただ、上肢や手指へのリハビリを無駄と考えたり、全人間的ではないと考えるかどうかは患者さんや利用者さんの問題です。

患者さんが無駄と思うのであれば、それを希望しなければ良いだけの問題です。

我々、リハビリを提供する側の立場は、患者さんや利用者さんの要望を重視して内容を検討するのです。

ハニーワちゃん

患者さんや家族は、単に麻痺を少しでも改善して元通りの身体に近づきたいだけです。

あんまり難しい理屈は必要ないかもしれませんね。

さくら先生

そうの通りですね。

本当に、初対面に近いような医師や他の医療従事者が、患者さんの人生を語ることが出来るのでしょうか?

勿論、日常生活の自立は重要なテーマです。

しかし、だからと言って上肢手指へのリハビリが軽視されるべきではないと考えます。

手や指先は回復しないという定説

ハニーワちゃん

さくら先生

他にも何かありますか?

教えてください。

さくら先生

分かりました。

手や指先へのリハビリを重視しない背景には、それらはあまり機能が回復しないという定説があります。

これは、日本のリハビリ界の創設期から繰り返し主張されてきたことです。

多くの論文も発表されました。

ただ、これらの多くは、片麻痺の上肢や手指が元通りのように実用化する可能性が低いという内容です。

決して、機能回復そのものが困難だという証明にはなっていないのです。

さくら先生

ここで言う実用化の基準は非常に厳しいものです。

箸を使ったり、書字をしたりということが実用化の指標になっていると思われます。

たしかに、一部の軽度麻痺を除けば、それらは難しい可能性があります。

さくら先生

しかし、上肢や手指には様々な役割があります。

例えば、バランスをとる時にやじろべえのように腕を広げることもその一つでしょう。

片麻痺の方が歩くためにはバランスが重要です。

しかし、そのバランスにおいて重要な上肢のリハビリを軽視して、単に歩行訓練のみをしていては片手落ちと言えるでしょう。

こんな基本的なことも理解されていないのが、現在のリハビリ医療なのでしょうか?

ハニーワちゃん

そうなんだ・・・

やっぱり、元のように回復しないのなら、リハビリしても無意味ということなんでしょうか?

なんだか、残念ですね。

仮に、箸が使えなくても、手すりを握ったり補助的に物を押さえる動作だって十分意味があることなのにね・・・

動きに乏しい手指には他動ストレッチのみ?

さくら先生

日常生活自立に結び付かないことや、回復し難い上肢や手指のリハビリは後回しにする!」

たしかに、そのような状況があると言えます。

病院でのリハビリ医療は、医師の処方の下に行われます。

医師の考え方が、指示をうけるリハビリスタッフへ大きな影響を与えることは避けられない事実です。

さくら先生

しかし、現場のリハビリスタッフ達にも様々なタイプがいます。

中には、医師からの指示は重視しながらも、患者さんの要望に応じて上肢や手指への機能回復への努力を怠らないスタッフもいます。

一方で、医師や上司から言われたことだけをやろうとするスタッフもいます。

近年は、後者のタイプの方が多いかもしれません。

当の医師そのものも、ガイドラインというマニュアル通りに医療を進めるようになりました。

その下流に位置するリハビリ療法士達もそうなっているように思います。

さくら先生

現実的に、最初から動きに乏しい手指のへリハビリは他動的なストレッチぐらいしかで行われていないことが多いと思います。

麻痺に対して動きを引き出すことを、「運動促通」といいます。

本当は、どのように運動を促通するかを追求することこそが大事な仕事ではないでしょうか?

ハニーワちゃん

私も聞いたことがあります!

◯◯法とか、△△療法とか、人の名前が付いたようなアプローチ法の中には結構有名なものがあるそうですね。

でも、それらは、脳卒中のリハビリの世界ではあまり主流ではないと聞きました。

これも残念です。

公的保険リハビリの限界

さくら先生

以上のように、上肢や指先へのリハビリが重要である反面、必ずしも重視されていない状況について述べました。

しかし、この背景には、各医療機関や個人の問題というよりは、公的保険制度による縛りのようなものもあります。

公的保険が定めるリハビリの枠組みは、一定の期間で取り組み、少しでも早く退院や終了を目指すというものです。

この枠組みの中では、どうしても前述のような自立を優先するようなプログラムにならざるを得ない面があります。

さくら先生

平成18年度にリハビリ日数制限が定められ、リハビリ難民問題が社会課題になった以後は、保険制度のリハビリで長期的な機能回復を目指すことは事実上厳しくなったように思えます。

今後は、保険外も含めた仕組みの中で目指すべきなのかもしれません。

さくら先生

リハビリ難民問題については過去にも記事を書いていますので、どうぞご参考にされてください。

常識にとらわれない脳梗塞のリハビリ方法

曲がる緊張=随意性ととらえる

さくら先生

仮に、何らかの手段により長期的なリハビリで手指や上肢の回復に取り組むことができたとしても、従来の常識にとらわれた方法論では成果は期待できないかもしれません。

例えば、緊張して硬くなった手指のリハビリは、現在のリハビリ技術では、ほぼストレッチなどの他動運動のみになります。

しかし、それでは、いくらリハビリ期間を長期化しても随意的な運動を回復させることは難しいでしょう。

ハニーワちゃん

たしかに、そうですね。

私のおじいちゃんも、手指のリハビリはマッサージだけだと嘆いていました。

このような場合、他にはどのようなアプローチがあるのでしょうか?

さくら先生

それは、手指や足首の筋肉の緊張を抑制の対象として見るのではなく、一つの随意性の表れとして考えてみることです。

実際に、本当に完全麻痺であれば、筋肉は弛緩状態となります。

事実、脳梗塞発症直後では、脳のショック状態によりこのような弛緩性の麻痺となります。

その後に、脳が何らかの回復へのアクションを起こすことにより筋肉の緊張が強まります。

手指を曲げる緊張が出現し始めたら、それを他動的に抑え込むのではなく、運動の再学習のきっかけにする発想が必要だと思います。

ハニーワちゃん

そうなんですね!

たしかに、手指の筋肉の緊張があるからと言って、他動的なストレッチやマッサージのみでは、運動を思い出す機会にはならないですね。

でも、筋肉の緊張を運動回復のきっかけとして考えてみると、たしかに少しずつ動き始めているとも言えるのですね。

手指は手関節に影響されることを認識

さくら先生

手指の麻痺の特徴は、曲がった状態から伸ばせないという事が多いでしょう。

確かに、曲がって固まった手指が自ら伸ばせるようになるには大きなハードルがあると思います。

さくら先生

ただ、ある程度随意性があり、自ら指を曲げられたり、手首を上に持ち上げられるような場合には指が伸びる可能性はあると思います。

そこで重要なのは、手指は手関節の位置に大きく影響を受けるということです。

さくら先生

手首を上向きに持ち上げることを背屈(はいくつ)といいます。

手首が背屈の状態になると、手指は自然に曲がりやすくなるという特徴があります。

さくら先生

逆に手首を下向きに下げると、自然と指は伸びやすくなります。

練習では、緊張の緩和と共に、力を抜いて手首を下に下げることを意識します。

それにより、自然な形での指のリラックスと伸展を引き出します。

複数の筋肉の連鎖に注目

さくら先生

手指と手関節だけでなく、人間の身体の筋肉には全身的なつながりがあります。

TOMAS W.MYERES「ANATOMY TRAINS」より
さくら先生

図は、手から体幹までの複数の筋肉が連鎖していることを示しています。

この連鎖は、麻痺により緊張した場合も同様に働きます。

さくら先生

つまり、手指が曲がっている時には、この図のように体幹から手まで連鎖的に筋緊張が高くなっています。

そのため、曲がっている指を緩めたり伸ばしたりする時に、同時のこの連鎖上の複数の筋肉にも緩みを引き出す必要があるのです

さくら先生

ストレッチしても一過性の効果しかない場合は、単一の筋肉は伸ばせていても同時に複数の筋肉を緩められていない場合が多いです。

複数の筋肉の連鎖に注目してアプローチすることが重要です。

指先の改善が腕や歩行をより良くするという事実

さくら先生

筋肉の連鎖は全身にも及びます。

さらに言えば、筋肉以外にも皮膚や皮下組織も全身を張り巡らしています。

さくら先生

全くの余談になりますが、昔モンゴルには毛皮剥ぎの名人達がいたそうです。

毛皮は、動物一匹からなるべく広く確保できれば価値が高まります。

そのため、名人達は、余計な傷を付けずに全身から一枚の毛皮を取り出す技術を身につけたそうです。

人間においても、皮膚は全身で一枚です。

さくら先生

実際には、皮膚と皮下組織は強固に結合されていますので、思いのままに皮膚や毛皮を採取することは指南の技です。

しかし、それくらいに、皮膚や皮下組織によって全身はつながっているとも言えるのです。

さくら先生

指先は、全身の中で表面積としては小さいエリアです。

しかし、筋肉や皮膚などの繋がりにより全身的に影響を持つとも言えるのです。

先ほど、バランスについて触れましたが、上肢や指先へのリハビリが立位バランスや歩行に影響を与えることは事実です。 勿論、下肢や体幹へのアプローチが不要という意味ではありません。 下肢や体幹の機能に対しては、それ自体の回復を促す必要があります。 重要なのは、身体を上肢や下肢などの単体で見るだけでなく、全身の一部として考えることです。

1回の指先へのリハビリにより分回し歩行も改善

60代脳梗塞女性への指先へのリハビリの効果

さくら先生

それでは、指先へのリハビリが上肢や手指のみならず、全身的な改善を導くことについて、事例を通じてご説明しましょう。

症例は、60才代の女性で、脳梗塞による右片麻痺の方です。

さくら先生

現在、発症から半年程度経過しています。

杖歩行や日常生活はかなり回復されていますが、利き手である上肢の機能が未だ不十分な状態です。

意欲も高く、毎回のアプローチでも少しずつ改善が見られています。

ハニーワちゃん

私のおじいちゃんと同じような感じです!

手指や上肢の随意性が不十分

さくら先生

👆手指や上肢には随意性が見られますが、未だ実際に手を使うことは不十分な状態です。

また、筋肉の緊張は比較的に高く、歩行をしたり、何かを頑張ると自然と麻痺側の上肢が曲がりやすい症状もあります。

分回し歩行が見られる

さくら先生

👆片麻痺の歩行の中には、分回し歩行と呼ばれるものがあります。

これは、麻痺側の脚を降り出す時に、膝や足首の分離した運動が不十分なために、代償的に振り回すような形となることを指します。

こちらの方にも分回し歩行が見られています。

手指や上肢へのアプローチを中心に実施

さくら先生

利用者さんのニーズから、アプローチは手指と上肢を中心におこないます。

ただ、下肢や体幹にも未だ不十分さがありますので、手指へのアプローチを通じて下肢や歩行にも影響を与えられるように工夫する必要があります。

そのため、アプローチの前後には、必ず歩行などの評価を行い、その日の改善を確認することにしています。

さくら先生

👆手指は一見、曲がって硬そうに見えますが、手首を下向きに下げて力を抜くことを学んでいただくことにより、徐々に指の動きが出現してきます。

さらに、指先を伸ばす筋肉や腱を刺激しつつ伸ばす機能を高めてゆきます。

手指に良い反応が得られたら、次第に腕や肩にも施術を進めてゆきます。

腕の機能の改善

40分間アプローチ前
40分間アプローチ後
さくら先生

👆40分間程度のアプローチの前後で腕の機能を比較しています。

アプローチ前は、肘が曲がり腕が重い状態ですが、アプローチ後には腕の高さが上がりやすくなっています。

分回し歩行の改善

40分間アプローチ前
40分間アプローチ後
さくら先生

次は、歩行の変化についです。

さくら先生

アプローチ前の杖歩行を後ろから観察すると、麻痺側の脚を振り出す時に分回し歩行が見られます。

分回し歩行では、脚が外側に振り回されるため、脚全体が外向きとなることがあります。

このケースでも、膝やつま先が外向きになっていることがわかります。

また、脚の振り出しに勢いが必要なため、左手の杖を少し外側について惰性を利用しているのが分かります。

さくら先生

アプローチ後では、分回し歩行が軽減して、膝もつま先も進行方向である前を向いています。

これにより、振り出しの効率が改善しています。

さらに、杖も比較的に身体の近くについていて、惰性による勢いを使わなくても振り出せていることが分かります。

さくら先生

このように、1回の手指へのアプローチでも、上肢や歩行に改善をもたらすことができます。

ハニーワちゃん

なるほど、よくわかりました!

さくら先生

少し、長い記事となりましたので、まとめを書きますね。

脳梗塞の指先へのリハビリを解説|ストレッチよりも効果的な方法とはのまとめ

  • 脳梗塞などの脳卒中の後遺症として多いものに片麻痺がありますが、脳梗塞後遺症では指先や上肢のリハビリが重要です。
  • 手や指の領域は、大脳皮質ではとても広い領域を占めます。手や手指が使われなくなるということは、大脳皮質の大部分が使わなれなくなり脳機能全体が停滞する危険性があります。
  • 現在の公的保険のリハビリは、少しでも早く退院や終了を目指すというものです。そのため、上肢や手指へのリハビリは軽視される傾向にあります。
  • 緊張の強い手指や上肢へのリハビリは他動的ストレッチのみでなく、運動の促通が重要です。
  • 指先へのリハビリは、手指のみでなく、同時に腕や歩行に必要なバランスの機能の改善にもメリットがあります。

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