半側空間無視へのリハビリアプローチ

半側空間無視へのリハビリアプローチとは

半側空間無視へのリハビリアプローチを考えてみましょう。

半側空間無視とは、高次脳機能傷害の一つです。

皆さんは、高次脳機能障害という言葉をお聞きになったことがありますか?

高次脳機能障害とは、脳の損傷に起因する認知障害全般を指します。

脳梗塞などの脳卒中以外にも、交通事故による頭部への外傷や認知症によるものも含まれます。

ここでは、高次脳機能障害として昔から有名な半側空間無視について考えてみましょう。

また、後半では私自信の半側空間無視への治療経験についても述べたいと思います。

半側空間無視は高次脳機能障害のひとつ

半側空間無視とは、主に右大脳半球損傷後に見られることが多くあります。

これは、有名は話なので、ご存知の方も多いと思います。

具体的な症状としては、左空間のものを完全に無視するというものです。

無視(neglect)という言葉が分かりにくいと思います。

無視とは、視覚や聴覚のレベルでは見えたり聞こえたりしているものが、脳の情報統合のレベルで消されてしまうことです。

無視は、感覚のあらゆる面で生じます。

視覚のみならず、聴覚、触覚などを含みます。

よって、見えない、聞こえない、感覚が麻痺しているというように見られがちですが、実はそれよりも上位の脳の情報統合の問題であります。

そのため、高次脳機能障害という表現に該当するわけです。

この半側無視の検査として有名なものに、時計の絵を描いてもらうというものがあります。

半側無視症状のある患者さんは、12時から1時、2時と書いてゆきますが、6時や7時のあたりから全く描けなくなります。

時計の針も、例えば8:10であれば、長針はきちんと描けますが、短針は全く描けない状況です。

このように、左空間を無視するような症状が生活の全般に現れます。

食事の際は、テーブル上の左側の食器や食べ物には手をつけません。

移動していても、左側の角を曲がることはなく行きすぎます。

また、無視の対象は、外部空間のみではなく、自分の身体を含みます。

左側の上下肢を忘れてしまい、怪我をするなどの状況が生じやすいのです。

半側空間無視に身体リハビリが有効

最初に明確にしておきますが、ここからは私個人の経験的な話です。

主に、身体的なリハビリが半側空間無視の症状の軽減に結び付いたという内容です。

今のところ、脳卒中治療ガイドラインなどには、身体的なリハビリが高次脳機能障害を軽減するというエビデンスはありません。

しかし、作業療法士などの多くのリハビリ関係者の中では、身体機能へのアプローチが認知機能面にもなんらかの影響を与えるということについては、それほど突飛な話ではありません。

それどころか、脳の機能を総合的に考えると、それはむしろ合理的な事であるとさえ言えます。

難解になりそうなので、あまり詳しい説明は割愛します。

しかし、脳が身体からの感覚情報を全て収集して統合していることを考えれば、筋肉や関節、皮膚などからの情報が脳へ影響を及ぼすことは当然のことなのです。

そのような意味において、私は少なくとも数十例の半側空間無視症状のある患者さんが、身体的なリハビリの後に何らかの改善を示したことを経験しています。

その、エッセンスは何かというと、やはり麻痺側身体への運動や感覚入力を通じて脳の病巣付近に何らかの変化があったのだと思います。

特に、麻痺側半身への重心移動の練習などは意味があると思います。

それは、片麻痺ではただでさえ、麻痺側へ重心が移動しなくなりますが、半側空間無視があるとさらにそれが強まるからです。

リハビリでは、患者さんが怖がらないように配慮しつつ次第に麻痺側へ重心移動を行えるように練習します。

ケースによっては、かなり難しい場合もありますが、様々な工夫を行いつつ取り組みます。

このようなアプローチの直後や、ある程度経過した後に、前述のような時計の模写をしていただきますと、多くに患者さんにおいて改善が見られます。

7時から12時までもきちんと描けるようになる場合や、針が適切に描けるようになる場合などです。

勿論、一つの検査だけでは説得力がないので、通常は類似の他の検査も組み合わせてますが、ほぼ同じような傾向となります。

実は、このような経験は、少なくないリハビリ関係者にあるのではないかと思います。

半側空間無視に身体リハビリが有効理由

では、身体的なリハビリが半側空間無視へのアプローチとなる理由を考えてみましょう。

リハビリ手技の中には、神経生理学的アプローチと呼ばれるものがあります。

実は、私もそのようなアプローチ方法を用いています。

これらには、運動や感覚などの身体へのアプローチを通じて、脳などの中枢神経系へ働きかけるという側面があります。

このように、リハビリとしては身体機能への訓練でも、結果的には脳へのアプローチということが目的でもあります。

半側空間無視が起きる脳の好発部位は、右の大脳半球の頭頂連合野と呼ばれる部分です。

ここでは、視覚や聴覚や身体の感覚などが統合されると言われています。

神経生理学的アプローチなどによる身体的リハビリでは、それらの感覚を複合的に刺激することになります。

例えば、重心移動のリハビリでは、耳の奥にある重心のセンサーを刺激しつつ身体からも感覚のフィードバックも行われます。

それに加えて、声かけを行い、同時に視覚的な対象も明確にしつつアプローチを行うことで、視覚や聴覚も動員されることになります。

つまり、単に重心移動のリハビリと言っても、やり方によっては、様々な感覚を脳に送り込むことになるのです。

これらの結果、脳内の病巣の周囲でも神経のバイパス路ができやすくなり、機能が代行される可能性があるのだと思います。

現在のところ、このような身体的リハビリが高次脳機能傷害である半側空間無視へも効果をもたらすという考え方は、まだ一般的とは言えないでしょう。

しかし、今後は次第に注目されるものと考えます。

半側空間無視へのリハビリアプローチのまとめ

半側空間無視へのリハビリアプローチとはのまとめ

半側空間無視へのリハビリアプローチを考えてみましょう。

半側空間無視とは、高次脳機能傷害の一つです。

半側空間無視は高次脳機能障害のひとつのまとめ

半側空間無視とは、主に右大脳半球損傷後に見られることが多くあります。

具体的な症状としては、左空間のものを完全に無視するというものです。

半側空間無視に身体リハビリが有効のまとめ

個人的に、数十例において、身体的なリハビリが半側空間無視の症状の軽減に結び付いたということを経験しています。

半側空間無視に身体リハビリが有効理由のまとめ

例えば、単に重心移動のリハビリと言っても、やり方によっては、様々な感覚を脳に送り込むことになるのです。

これらの結果、脳内の病巣の周囲でも神経のバイパス路ができやすくなり、機能が代行される可能性があるのだと思います。

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