
目次
久留米や全国で脳梗塞を発症した時の合併症
脳梗塞に伴う廃用症候群

さくら先生!
今日は、脳梗塞に罹ったあとの合併症について教えてください。

アザーシ君、わかりました!
それでは、脳梗塞に発症した後の代表的な合併症の紹介をしましょう。
そして、その中でも、特に誤嚥性肺炎について詳しく解説しますね。

誤嚥性肺炎ですね。
聞いたことはあります。
詳しく教えてください。

では、先ずは次の図を見てください。

廃用症候群について
学研ココファイン https://www.cocofump.co.jp/articles/byoki/2/

この図は、脳梗塞を発症した後に合併しやすい廃用症候群を示したものです。

廃用症候群とは何ですか?

脳梗塞を含む様々な病気の急性期などで、活動低下や過度な安静を続けることによる弊害です。

沢山ありますね。

筋力の低下や床ずれなどに加えて、肺炎なども含まれています。

廃用症候群は、その後のリハビリテーションの効果を考えた場合、極力避けなければならないものです。

肺炎の中には、今回のテーマである誤嚥性肺炎も含まれるのですね。

その通りです。
では、誤嚥性肺炎についてお話しましょう。
脳梗塞に伴う誤嚥性肺炎

次の図をみてください。

嚥下障害による誤嚥性肺炎
高木 誠 「脳梗塞の防ぎ方・治し方」 講談社

図は、私達の顔面の断面図です。
私たちの喉の部分には、気道と食道があることはご存知でしょう。
通常、食べ物を飲み込むと食道に流れ込む仕組みになっています。
これを正常な嚥下(えんげ)と言います。
しかし、脳梗塞などにより、嚥下障害が生じると食べ物が食道ではなく、気道に流れ込んでしまうことがあります。
これを嚥下障害と言います。

そして、この嚥下障害により肺炎を生じることを誤嚥性肺炎と呼ぶのです。
誤嚥性肺炎については、後でさらに丁寧にご説明しましょう。
脳梗塞に伴うエコノミークラス症候群

脳梗塞による廃用症候群には、いわゆるエコノミークラス症候群も含まれます。

エコノミークラス症候群は聞いたことがあります。

エコノミークラス症候群は、深部静脈血栓症ともいいます。
飛行機などに長時間乗って、足を動かさない状態になると、下肢の静脈に血栓ができる場合があります。
その血栓が肺で詰まることを、肺塞栓症と言います。

深部静脈血栓症から肺塞栓症へ
血栓症.net https://betterl.bayer.jp/kessensho/venous-thrombosis/illness
久留米や全国での脳梗塞に伴う誤嚥性肺炎
嚥下のメカニズム

さらに、誤嚥性肺炎について詳しく学びましょう。

正常な嚥下における喉頭蓋の動き
看護roo! https://www.kango-roo.com/learning/2268/

この図は、正しい嚥下において、食傀が食道に流れこむ過程を示しています。
左から第一相、第二相、第三相の順番です。
注目していただきたいのは、赤丸で囲んでいる部分です。
ここを喉頭蓋(こうとうがい)と呼びます。
第一相から第二相に以降する時に、喉頭蓋が下に下がり、気道に蓋をしています。

これにより、正しく食傀が食道に流れるのですね。

次に、喉頭蓋を拡大した図をお見せします。


なるほど!
本当に蓋のような形をしているのですね。
脳梗塞になると嚥下も難しくなる

このような正常な嚥下ができなくなることを嚥下障害と言います。
脳梗塞に罹ると、しばしばこのような嚥下障害を生じることがあります。

そして、嚥下障害により肺炎が生じることを誤嚥性肺炎と呼ぶのです。

次の図は、実際に誤嚥性肺炎に罹った肺のCT画像です。

誤嚥性肺炎のCT像
全部見える呼吸器疾患 成美堂出版

赤丸の部分が肺炎による浸潤影です。

因みに、こちらが正常な肺のCT像です。

正常な肺のCT像
やさしイイ呼吸器教室 http://tnagao.sblo.jp/article/185542784.html

たしかに、全然違いますね。

でも、そもそも、どうして脳梗塞になると嚥下障害が生じやすいのでしょうか?

それは、嚥下機能自体が自律的な運動だからです。
脳梗塞に伴う運動障害には、片麻痺があることが知られていますね。
上下肢などの半身麻痺については、以下の記事が参考になります。
どうぞ、ご参考にされてください。
脳卒中片麻痺に多い痙性麻痺とは|症状と治療やリハビリ方法について
脳梗塞の指先へのリハビリを解説|ストレッチよりも効果的な方法とは

実際に、一言で片麻痺といっても、その運動障害は複雑なものです。
上下肢の半身麻痺以外にも、体幹機能の低下や呼吸・食べる機能なども影響を受けます。
特に、食べる機能は、かなり自律的な運動なため、脳梗塞などにより脳の神経系がダメージを受けると、かなり影響を受けやすいのです。

自律的とは、例えば自律神経作用のように無意識的な働きが多いという意味ですか?

その通りです。
私たちの運動は、実は大半が無意識的な調整を受けているのです。
例えば、コップに手を伸ばす時を思い浮かべてください。
意識が働くのは、動き始めや、正確に動きを調整する時などです。
それ以外は、大体無意識レベルと言えます。

たしかに、コップを見て手を伸ばす過程においては、肩を何度曲げるとか、肘を何度伸ばすとかを意識することはありませんよね。
コップを持った後も、余程、見かけと重さが違うなどのことがない限りは、そんなに意識せずに口に運んでいるような気がします。

そうです。
そのような無意識的な動きが自律的な動きということになります。
そして、食べる機能は、その自律性が特に顕著ではないでしょうか?
口の中に入れた食べ物は、その大きさや硬さなどに応じて口の使い方が変わります。
せんべいとプリンでは、全く異なる口の使い方をしていますよね。
しかし、それらの違いをいちいち意識的に切り替えている訳ではありません。

固い煎餅だったら、前歯で砕いた後に、奥歯でも咀嚼をします。
しかし、プリンだったら、スプーンから口に取り込んだ後は、奥歯で噛んだりはしないですよね。

たしかに、そのまま舌で味わって、喉ごしを楽しむような感じかもしれません。

そうですね。
また、ご飯を咀嚼して嚥下する時と、水を嚥下する時では、舌や口の中の使い方まで異なります。
そのような口腔器官の使い分は、相当に緻密と言えます。
そのような精巧な動きが妨げられることが、嚥下障害の本質だと思います。

はい。
何となくわかります。
でも、食べる機能については、もっと時間をかけて学びたいと思いますね。
久留米や全国での誤嚥性肺炎の予防方法
食後の口腔ケア

食べる機能について語り出したら、それだけで時間が無くなりそうです。
この辺で、本題の誤嚥性肺炎に戻りましょう。

誤嚥性肺炎に罹らないようにするには、何か方法があるのでしょうか?

はい。
次の図を見てください。

誤嚥性肺炎を防ぐ
健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreisha-kokyukishikkan/byotaijikanjiku-koreishagoenseihaien-sesshokuengeshogaiyobo.html より改編

この図では、誤嚥性肺炎を防ぐための様々な工夫を示しています。

沢山ありますね。
この中で、特に脳梗塞の急性期に注意すべきことはありますか?

全部大事なのですが、中でも赤で囲んだものは不可欠と言えるでしょう。

食後の口腔ケアは、基本中の基本と言えます。

食べかすが誤って気道に入ったら危険ですね。

その通りです。
実は、口腔ケアには二つの側面があります。

一つは、口の中を清潔に保つためのケアです。
うがいや歯磨き、義歯や舌の清掃等を行い、歯垢や食べかすを除去します。
元々、口の中には多くの細菌が繁殖しています。
それらが、食べかすなどにより増殖すると誤嚥性肺炎の危険性が高まります。
これを防ぐには、口の中を清潔に保つケアが必須です。

はい、これは大事ですね。
もう一つの側面とは、何でしょうか?

はい。
それは、機能的な口腔ケアです。
先ほど、脳梗塞などになると、食べる機能にも支障をきたす場合があることを述べました。
これに対して、機能回復訓練である所謂リハビリを行うことも口腔ケアなのです。
口の中や口周りのマッサージ、飲み込みのための訓練などを行うことが重要なのです。
食後の姿勢

それに加えて、姿勢も重要です。
特に、急性期でベッドに寝ている時間が長い場合には、ベッドのギャッジアップが大切です。

できれば、食後はなるべく座位で過ごす方が良いのですが、それが困難な場合は必ず頭が高くなるようにギャッジアップしてください。
できれば、30°程度ギャッジアップすることが望ましいです。

完全にフラットに寝てしまうと、喉頭蓋などに残っていた食物残渣物が気道に流れ込んでしまう危険性が高まります。

なるほど。
この二つは大変重要と言えますね。
久留米で脳梗塞を発症したら!|合併症の誤嚥性肺炎の予防とは?のまとめ
久留米や全国で脳梗塞を発症した時の合併症
脳梗塞に罹ると、特に急性期には廃用症候群の予防が重要です。
廃用症候群には、肺炎やエコノミークラス症候群が含まれます。
肺炎では、特に誤嚥性肺炎への注意が必要です。
久留米や全国での脳梗塞に伴う誤嚥性肺炎
我々の嚥下は、非常に精巧で自律的な運動と言えます。
脳梗塞などに罹患すると、片麻痺による上下肢の麻痺だけでなく、嚥下障害も伴うことがあります。
この結果、誤嚥性肺炎が生じやすいのです。
久留米や全国での誤嚥性肺炎の予防方法
誤嚥性肺炎を防ぐには、先ずは口腔ケアが重要です。
口腔ケアには、単に口の中を清潔に保つだけでなく、機能訓練としての側面もあります。
また、食後の姿勢も大変重要です。